食事を長生きという言葉で簡単に括ることは少し苦手です。
というよりは、ナンセンスなのかもしれません。
まずその前にひとつ。
間違えないでおきたいのが、
『命を守る』(飼い主が)
ことと、
『長生きする』(動物が)
ことは全く違うことです。
命を守ることに関心が低い割に、長生きしてほしいと願ってはいないでしょうか。
鳥に限らずあらゆる動物において、どうも気になる点です。
あれが良いこれは悪いという情報には敏感でありながら(根拠が曖昧であったり、実際の影響が示されていないにもかかわらず)、ロストや事故がこんなにも多いことがその矛盾を物語っている気がしてなりません。
オーガニック食を良いと言いつつ外を歩かせたり飛ばせたり、なんて言うとわかりやすい例えでしょうか。
”万が一ロストした時のために”
これは一見リスク管理に聞こえますが、動物の命を守る側に保険をかけている側面も持ち合わせます。
このような認識に違和感がないうちはロストが減らないかもしれません。
万が一の使い方がちょっと違うように思います。
まあ隕石が家を直撃したらロストは免れないかもしれないので、100%防げるとは言えませんが。
さて本筋に戻り、
はっきり言って、何を食べても長生きする個体はいますし、何を食べても長生きできない個体もいるのは事実です。
健康を意識すれば必ず長生きできると信じている人にとっては、あまり考えたことがないことかもしれません。
生命の長さはひとつの要素では決まらないと、獣医師も仰っていますね。
命を見送ってきた経験から言えることですが、もうこればかりは生き物なのでどうしようもないことで。
それと、健康に良いとされているものでも、体質に合わない場合もあります。
それは切ないかな、私自身が自分の体で証明しており、健康寿命を延ばすとされるある食材を摂取すると体調を崩すことがあります。
あれ、そうすると長生きできる食事とはなんぞや?
何でもかんでもいい、というわけにもいきません。
それではなぜ健康を考慮した食事が必要なのか。
それは”生まれもった生命力におけるリスク軽減のため"と考えてみると、色々と腑に落ちやすいことに気付きます。
逆に言い換えれば、”生きるうえでのメリット増幅”のために食事選びがあっても良いとも考えることができます。
なんだかまどろっこしくてごめんなさい。
何が生きることにプラスでマイナスなのか、栄養素だけで語れるでしょうか。
生きる喜びとはなんでしょうか。
「あなたの推奨する食事は長生きできると証明されているのか。あるなら取り入れたい」という質問を受けたことがあります。
全てにエビデンスがないと物事を選択できないことは飼育を難しくさせます。
逐一細かく体に良いか悪いかを論じたところで、良いものでも食べ過ぎればNGですし、悪いものがどれだけ悪いかの検証レベルがわからないで論じてもあまり価値はないように感じます。
(即命に関わる毒性は別として)
その成分だけを意図的かつ極端に抽出した動物実験と、生活のなかでの曝露量(摂取量)はイコールではありません。
昔流行った、買ってはいけないという本と、買ってはいけないを買ってはいけないという本を思い出しました。
結局は水掛け論になってしまう面もあります。
現在私は国内外の学会で論文発表をしたり特許を複数取得している研究者のチームで働いており、論文に触れる機会がよくあります。
論文の定義は、
『ある研究テーマに関する事象を調べるために、客観的な文献や資料を幅広く集め、それらを分析・考察した結果に基づき、自分の意見をまとめた文章である』
です。
論文は研究費のかけ方に幅がありますし、総評がふんわりしたものも結構あります。
”~の可能性がある”とか”今後の動向に注目”など、これが絶対なのだと強く言い切るというよりは、意外と考察ちっくです。
そのため必ずしも論文が絶対的な証明になるとは限りませんし、それを用いて更に検証実験を繰り返すものともいえます。
つまりいくら論文で論じられているからといって、あくまで可能性の検証のひとつに過ぎない場合も往々にしてあるのです。
論文で示されていると聞くと確固たる内容なのだと感じがちですが、ちょっとイメージが変わりませんか?
その中でも、獣医師が私達に共有してくださることは信用性があるという判断でよいと思います。
しかも裏話をすると、研究費やポジションを維持するために論文のノルマがありますので、、、ゴニョゴニョ
それを踏まえると、長生きできると証明された食事、という視点が少々難解であることが少し伝わりますでしょうか。
そもそも同じ量を食べても個体ごと代謝の違いがあるくらいですし、仮に検体で何かしらを論じたとしてあなたの愛鳥がそれに当てはまるでしょうか。
これは忘れないでおきたいところです。
それでも、これが良くて悪くてと示してくれた方が安心する飼い主さんがいることは理解します。
しかし不安を煽る表現が過剰ではないか、それを利用した誘導ではないか等、受け手が冷静に判断できないことには、間違った情報を鵜呑みにして不用意に広め、回り回って誰かを風評被害に晒してしまう危険性があります。
果たして人が情報に飛びつくとき、そこまでの想像力をもてるでしょうか。
私は研究者でも医師でも獣医師でもないので、安易に飼い鳥の食事の全てをわかったように論じることはできません。
ただ、かかりつけ医や名前をよく知る獣医さんの発信にて勉強させていただいたことを愛鳥家として自身の愛鳥の飼育に活かしたり、同じ愛鳥家として皆さんから学んだことを取り入れさせていただくなかで、命を守ることや愛鳥が幸せを感じる時間が増えることについては差し支えない範囲でご提案できればと思っています。
数ある中から選択するのは飼い主さんであって、飼い主でない他人が責任をもつことは難しいです。
いや、すべきではないのかもしれません。
で、結局長生きできる食事は何なの!
と怒られそうなので具体的に述べるとすれば、人間と同じで、
脂っこいものを食べすぎず、量も食べすぎず、どうやら良さそうと言われるものも含めバランスよく色々食べる、
それでいいと思います。
あれっ、エビデンスなんかなくても皆さんわかっていることでしたね。
その中にちょっと違う食感のものがあったり、刺激的な風味を感じたり、なんだか面白そうな形だったり、そんなものが選択肢の一つとしてあってもいいのではないでしょうか。
そして住環境を整え、可能な範囲でよく動き、しっかり休み、定期的な体重管理と健康診断を行う、それが基本ではないでしょうか。
多少の食事量・内容や体重の変動があったとしても、一年を通して、また年齢のステージに応じて、元に戻したり調整していけばよいのです。
何かを妄信するよりも、よーーーく愛鳥をみること、見逃さないこと、その方が重要です。
飼い主のあなたが一番愛鳥のことをわかっていてほしいです。
それが長生きの秘訣のひとつに思います。